2008年12月24日(水)18:55~23:32 TBS
※ドラマは20:45~
【キャスト】
東条英機(陸軍大臣・内閣総理大臣)…ビートたけし
石井秋穂(軍務局軍務課高級課員)…阿部 寛
吉原政一(東都新聞記者)…高橋克典
東郷茂徳(外務大臣)…橋爪 功
近衛文麿(前・内閣総理大臣)…山口祐一郎
木戸幸一(内大臣)…風間杜夫
嶋田繁太郎(海軍大臣)…伊武雅刀
武藤 章(軍務局長)…高橋克実
杉山 元(参謀総長)…平野忠彦
賀屋興宣(大蔵大臣)…益岡 徹
鈴木貞一(企画院総裁)…大杉 漣
豊田貞次郎(前・外務大臣)…平泉 成
塚田 攻(参謀次長)…目黒祐樹
永野修身(軍令部総長)…六平直政
及川古志郎(前・海軍大臣)…黒沢年雄
佐藤賢了(軍務局事務局長)…木村祐一
石井キヨ子(石井秋穂 妻)…檀れい
徳富蘇峰(ジャーナリスト)…西田敏行
★
昭和天皇…野村萬斎(特別出演)
★
山本五十六(連合艦隊司令長官)…市川團十郎(特別出演)
【スタッフ】
脚本:池端俊策
演出:鴨下信一
プロデューサー:八木康夫・堤 慶太・那須田 淳
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(注:これ以下の感想は、あくまでこのドラマを見て、ドラマの中で表現されていることについて感じたことを書いています。今回のドラマのテーマになっている戦争について、沢山の研究結果や解釈があると思いますが、自分はそれについて全て知っている・理解しているわけではありませんので、それなりの事実誤認や解釈の相違は多々出て来ると思います。あくまでドラマの世界の中での感想として受け取っていただければと願います。)
未曽有(笑)の平成大不況にて例年になく静まり返ったクリスマス・イブに放映された、重々しいテーマのドラマ。今更言うまでもなく、我らが萬斎師がなんと昭和天皇役で民放ドラマ初登場という、それこそ未曽有のビッグ・サプライズの結果がどうであったかが最大の関心事ではありました。
とにもかくにも、"あの局"が制作する戦争ドラマです。いろいろな意味で"中身"にはさほど期待していませんでした。前半のドキュメンタリー・パート冒頭にて、司会のAアナ(彼しかアナが居ないのかこの局は…隣に女優I・Pの幻影が浮かんで仕方ない・爆)が、当初の予定ではこのドキュメンタリーのナビゲーターにC・T氏を配していたのだけれど、残念ながら他界されたので…というようなお断りを述べていたのですが、もしこのC・T氏が予定通り出演されていたら何を発言したのか…(苦笑)。
ドキュメンタリーでは、今回のドラマに登場する"当事者たち"に縁の方々が多数出ておられて、血縁ならではの興味深いお話をたくさん耳にすることが出来ましたが、その言葉をそのままに解釈して良いものか。終戦後、さまざまな"風"にさらされてきただろうこの方達の年月を思うに、あだやおろそかに表面的な見方は出来ないなぁというのが率直な思いでもありました。
「あの戦争の責任は何処に在るのか、戦争を推し進めた軍か、煽動したマスコミか、熱狂した民衆か」という問いかけが、ドラマ冒頭、高橋克典さん演じる新聞記者の独白で示され、それはドラマの中でも西田敏行さん演じる徳富蘇峰との対話の中で、時には激しい口調のやりとりでありました。しかしその問いかけが見ている側に伝わるほど、ドラマの中で特にマスコミや庶民についての描写が充分にあったとは思えません。一応、それっぽいシーンや実際のニュース映画?など挿入されてましたが、これまでの既出のものとさほど変わらず、そこに特に徳冨蘇峰が「(私が)煽ったんだ!」と叫ぶだけ。つまりそのような煽動・熱狂の空気を丁寧に伝えることなく、「こういう方面からの視点も無視してはいないんですよ」的な言い訳を役者が代弁者となってがなっている、としか感じられませんでした。
なので、ドラマの最終章に当事者の血縁者が再度出ていらして「軍人は戦争が商売、戦争をしたがるから」というような発言されているところを流されてしまうと、やはりこのドラマのスタンスは問いかけ以前にいつもと変わりなくソコなんじゃないか、どうせならいつも通りに偏向で作っても良かったんじゃないの?と意地悪い感想も浮かんでしまいました。無論、この血縁者の方々の発言の深層を慮る必要はあり、額面通りに受け取ることの危険性は分かっているつもりなんですけれども(汗)。
結局、「責任の所在を皆に考えてもらう」としながら、少なくともドラマの中ではその時代の(軍部以外の)空気を伝える描写が不充分で、見る側が考えるとっかかりを奪われたような格好になっていたように思えました。まぁそれを丁寧に作ろうとしたら、たぶん2時間半では無理だったと思います。あの開戦までの3か月程度の短い期間に絞ってシナリオを組まれたという段階で、そこに至るまでの経緯は織り込んだところで結局は取ってつけたようになると思いますし。曲がりなりにもこういうスタンスを取って訴えかけた、というだけでも、それはそれなりに意味があることだったと思う方が良さそうでしょうか。
という風に、責任所在云々の側面で見てしまうと、何とも気持ち悪さだけが残り、まるで「固いと思って思いっきり力入れて噛んだら豆腐だった」みたいな拍子抜け感だけになってしまってとにかく消化不良。明けて翌日、リアルに胃が痛くて朝飯抜きで仕事に向かったという、嘘のような本当の話もあったのですが(笑)。
日を変えてもう一度拝見。視点を別のところに持って行った(実はコッチが本当のメインテーマだったのか)ら、今までの印象ががらりと変わって、この手の重いドラマに対しては少々語弊があるかも知れませんが非常に"面白く"見られました。まぁ何よりこれだけ集めも集めたり、実力派のオジサマ俳優達(笑)、この全く華やかさに欠ける(失礼っ!)むさい集団(阿部さんや山口さんは外しておくべきか…)が、シナリオの消化不良も何のその、実に濃密な絵面を創っておられました。
ドキュメンタリー部分でも"統帥権"についていろいろと語られていました。御存知の方には今更な言葉でしょうし、この統帥権だけが戦争回避への流れを麻痺させていただけではないとは思いますが、ドラマの大部分でまるで決して解けない呪文のように当事者達にまとわりつき、法(大日本帝国憲法)を順守しようとすればこの統帥権という一種の"法のねじれ・歪み"に取り巻かれてしまうというジレンマが良く表れていたと思います。あの立ち込める煙草の煙の中で繰り広げられる堂々めぐりの議論。明治の元勲達が理想に燃えて作り上げた国のシステムがそのまま守られてきたが故に、この事態にとんでもない手かせ足かせになっている。いや、要はそれを"使う"側の力量に依るところが大きいんでしょうが。参謀本部と軍令部のトップが、それはそれは出来た人間なら…。
彼らもまた、海軍や陸軍という"一国一城"の主であり、彼らの下にはおびただしい数の部下達が居ます。その"城"の利益を守るための責任が彼らには当然あり、一見馬鹿馬鹿しくさえ見える、少ない資源の取り合いシーンは、そのこと自体の是非は別として実に納得出来る場面でした。現国会でも俗に"○○族"と言われるような国会議員が利益を守るために口角泡飛ばして論戦している姿とダブるというのは言うまでもありません(笑)。
さて萬斎師の件ですが、少なくともTVドラマにおいて、これほど意思表示・主張をはっきりと声に出す演出をなされた昭和天皇役は今まで無かったのではないかと思います。映画や舞台ではあったかも知れませんが、不特定多数が見られるTVでこのインパクトの強い天皇像はそうめったに見られるものではなかったかと。普通、戦後生まれが抱いている昭和天皇のイメージは、非常に柔らかな物腰の、いささか失礼を承知で申し上げれば飄々とした空気を纏った"日本のおじいちゃん代表"という感じでした。この開戦時の天皇と萬斎師の実年齢はほぼ同じ、壮年期初頭の昭和天皇の印象が今分かるはずもありませんが、高貴な風格はもちろんのこと、御心の奥にはこのくらいの熱さを持たれていたのではないかと推察します。ましてや国家の非常時…。
"統帥権"という呪文が国家の意思決定回路に重大なねじれ・歪みを生じている以上、そのねじれ・歪みを"利用"する者がいる以上、TV画面に現れている天皇の立ち位置は、見ていて非常に辛いものがありました。統帥権の上に立ちながら「君臨すれども統治せず」の立憲君主のお立場を厳守される。意思表示はされるが、それは決定には直接つながらない。あの「どうか」という腹の底に響くような問いかけが、ままならぬお立場の中で必死に絞り出された言葉に聞こえました。
圧巻はやはり東条英機の開戦の奏上。情けないほどに泣きじゃくりながら第三案…実質的に開戦の意味しか持たない案を述べる東条に、天皇がただただ哀しげなまなざしを送るところは、不覚にも2度目の鑑賞でホロリとしてしまいました。敬愛し信奉するお上の意思を実現出来なかった東条の無念さ、その東条の無念と、開戦回避の願いと法順守の矛盾の前になすすべない自らのお立場を痛感されているのかお上。もしかしたら、このシーンの為にこのドラマは作られたのかも知れないと、 ファンの贔屓目もあるかとは思いつつ…。
そのたけし東条。正直なところ、ビートたけしさん御本人にしか見えませんでした(爆)。しかし不思議なもので、この人はそれで許せる気持ちになってしまう。今までも大久保清・金嬉老・イエスの方舟の牧師など、非常にデリケートな扱いを必要とする人物を演じてきた彼ですが、今回の配役はその最たるものだったことでしょう。確かに東条英機という人間の評価は現在に至ってかなり分かれてきているとは思いますが、それでもいまだ"日本のヒットラー"というイメージが薄くなっているとは思えません。そういう大変な役を、後腐れなく演れるのは彼しかいないんじゃないか。
確かに、滑舌はボロボロで(ご本人も台詞にはかなり苦労したとのお話)立ち姿もおおよそ軍人には見えない姿勢の悪さ、更にあの彼独特の身体や頬をピクンピクンと動かす癖はそのまんまで、当初はもうそこにいらついてしまっている自分が居たのですが(苦笑)、真実の姿はどうであれ、このドラマの中で描かれている不器用な努力家、ひたすら一途にお上を慕った軍人としての東条は、ビートたけしさんの中にしっかりと生きていたように思います。
他にも…同じく戦争回避を願った石井秋穂役の阿部寛さん、体躯を生かした軍服姿があまりに素晴らしく見とれておりました。「少しでも気を抜くと(所作が)現代人に戻ってしまう」とメイキングで語られてましたが、その言葉通り、徹頭徹尾指の先まで神経の行き届いた"エリート軍人"の姿はお見事。戦争回避の最後の手段・内閣総辞職をかたくなに拒む東条との対峙シーンが印象に残りました。近衛文麿役・山口祐一郎さん…ヘタレ宰相もっと見ていたかったぞー!!…まぁ仕方ないんですけどね~しかしあの何とも無責任な放り出し方に、某・元首相を思い出した方は少なくないだろうと(笑)。外務大臣東郷茂徳役・橋爪功さんはじめとする円卓会議のお歴々は皆さん、本当に安心して楽しく見させていただけました。おっと忘れちゃいけない御所様を(笑)…市川團十郎丈、とにかくお元気で安堵しました。物凄い眼力の山本五十六、登場時間は短かったですが強烈なインパクトを残してくれました。遊び心も備えた粋な司令長官に乾杯。西田敏行さんの徳冨蘇峰はかなりカリカチュアライズされた感じで、"昭和の怪人"というイメージでしたね(笑)。そうそう檀れいさん!見事に"昭和初期の奥様"の雰囲気でした。むさい画面(たびたび失礼っ!)だらけの中でほっと一息つける美しい癒し系。阿部さんとの夫婦像が非常に穏やかで良かったです。
ということで、俳優陣には心から楽しませてもらったのですが、やはり前述しましたように、「この戦争は何だったのか、責任はどこにあるのか」というテーマは掲げられっぱなしで、曖昧模糊としたまま、やっぱり軍の問題じゃないかという、いつものところに曖昧にソフト・ランディングしたかのように終わってしまったのが悔やまれます。これまた前述しましたように、これを民放がたかだか2時間半で描写しきるのは無理だと思います。民放の宿命としてCMで物語が細切れになるのも激しいストレスを生じました。CMで実質的な時間が短くなるのだったら、映画あるいは公共放送で、と思われた方は少なくないのではないかと。
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余談中の余談(笑)。今回の放送に先立って、数日前にナビ番組がありましたが、番組のメイン画面(Aアナ達の背景)に、今回のドラマに登場する人物達の実際の顔写真が投影されていて、それが時間ごとにその人達を演じる俳優陣の顔にモーフィングしていくというエフェクトがなされていました。たとえば本物の東条英機とたけし東条の顔が同じ場所に交互にあらわれるわけです。これは本放送の前半・ドキュメンタリーパートでも同じセットが使われていました。しかし途中で気が付いた…東条や蘇峰、石井秋穂に妻キヨ子、山本五十六らはみなその俳優さんの顔にモーフィングしているのですが、昭和天皇役の萬斎師だけ萬斎師のまんま!しかしナビ番組の時は間違いなくモーフィングしてたんですが…やはり"お写真とはいえ昭和天皇のお顔を【いじる】"というのはまずいのではないか、ということだったんでしょうか。どちらも録画撮り番組ですので、本放送の方は急遽萬斎師のところだけ画像処理でもしたのか…。うーん、逆に悪目立ちしてる風に見えてしまってなんだかなぁ…。
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