現代狂言Ⅱ~狂言とコントが結婚したら~。
平成19年10月9日(火)14:00~ 於:国立能楽堂
◆挨拶 南原清隆
◆『二人大名』
使いの者:野村万蔵 大名:野村万禄・野村扇丞
◆『一人サラリーマン』
社長:渡辺正行 副社長:平子悟(エネルギー)
サラリーマン:岩井ジョニ男(イワイガワ)
◆『TANE~種~』
お笑いコンビ・世阿弥:南原清隆
敏腕ディレクター:野村万蔵
大物狂言師:島崎俊郎
アシスタント・ディレクター:ドロンズ石本
カメラマン:森一弥(エネルギー)
お笑いコンビ・世阿弥:井川修司(イワイガワ)
世阿弥の霊:野村扇丞
ひろみちお兄さん:佐藤弘道
打楽器:和田啓 管楽器:稲葉明憲 弦楽器:田中悠美子
※挨拶
遂に第2弾となりました「現代狂言」。初日・初回の本公演、さすがに平日の昼とあってお客さんの入りは6~7割といったところで少々淋しいか(この日の夜公演は満員御礼だったようでホッとしました)。客層は、前回と同じように普段お笑いライブに行ってそうな若い方々が目立ちました。
今回もまずはナンチャンこと南原清隆さんのご挨拶から。切戸口から黒紋付に袴のナンチャン登場。前回よりも更に"狂言師らしく"見えます(笑)。「ウッチャンナンチャンの"カミカミブツブツマシーン"こと南原でございます」という自己紹介に見所大笑い。「雨で足元が悪い中、ようこそおいで下さいました!この舞台をご覧になる際のルールはただ一つ。とにかく笑って下さい!」と強調するナンチャン。「狂言は昔から続いている"お笑い"です。笑いは身体に良いとも言われています。チケット代分だけでも笑ってお帰りになって下さい(笑)」。
ここより演目解説。『二人大名』は「生粋の狂言でございます!」最初、言葉が分かりにくいとは思うけれど、まず3分間じーっと聴いていれば必ず分かるようになる(笑)。「重要無形文化財(カミそうになって笑)の野村万蔵さんが出られます。じっくりとご覧下さい」そしてこの『二人大名』の舞台を現代に移し替えて書き直されたのが次の『一人サラリーマン』。「ここでは渡辺正行さんが登場します。元"アニキ(もちろん、コント赤信号の懐かしのネタから・笑)"で、現在は"アトラクションの副支配人"でございます(見所大笑)」最後にメインの『TANE~種~』。ここでは元ヒップアップで"アダモちゃん"こと島崎俊郎さんや、元NHK・体操のお兄さんこと佐藤弘道さんが初出場。「島崎さんからは『(舞台に出る時)裸で真っ黒に塗って出て来ても良いか?』と尋ねられまして(見所爆笑)…さすがにそれは出来ないので(苦笑)」また、この『TANE』では、野村万蔵師が(生まれて?)初めて現代コントに挑戦するのが最大の目玉とのこと。前回はタレント側が狂言に寄っていく形になっていたと思いますが、今回は狂言側の万蔵師が現代コントの方に寄っていく。これはちょっとした"事件"かも知れないと思いました(笑)。
※『二人大名』
二人の大名が野遊びにやって来て、その途中の街道で自分達の荷物を持たせる者を探しています。そこにちょうど、ある使いの者が通りかかったので、大名達はその者を呼び止め太刀で脅し、無理矢理お供にしてしまいます。太刀の持ち方など、あれやこれやと注文をつける大名達に、内心面白くない使いの者。そこで持たされた太刀を振りかざして大名達を脅し、今度は自分が優位に立って大名達をからかいます。半裸にされて犬や鶏のマネをさせられたあげく、起き上がり小法師の舞い謡いまでさせられる大名達。最後は服を返してもらう約束も破られて、逃げる使いの者を追いかけて行きます。
萬家の狂言を、普通の公演でなく、毎回この企画で観ることになってしまうのはいかがなものかと我ながら思いますが(苦笑)、今回も定番の爆笑演目を楽しむことが出来ました。やっぱりこの曲は面白い!!今回もお客さんのツカミはバッチリでした。
※『一人サラリーマン』
あくどい商売で儲かっている会社の社長と副社長がクラブに行き豪遊しています。社長は社の犯罪的行為が記録されているCD-ROMを、物を運ぶしか能力のないダメ社員にこのクラブまで持って来させるよう命令します。やがてやって来たダメ社員は、酔っぱらった社長に命令されて散々に物真似芸をやらされます。やっと満足した社長はダメ社員に褒美をやりますが、肝心のCD-ROMのことをすっかり忘れているので帰ろうとするダメ社員。慌てて社長が引き止めると、さすがのダメ社員もこのCD-ROMが非常に大事な物だと分かり、物真似芸をやらされバカにされた仕返しに、CD-ROMをエサにして今度は社長と副社長に芸をやらせてしまいます。いい加減いたぶった後、社長にCD-ROMを返しますが、実はダメ社員の胸のポケットにはもう一枚のCD-ROMが隠されていたのでした。
前回も、まず初っ端に古典を演じて、その直後にそれを基盤にした新作狂言(現代版)を持ってくるという形式を取っていました。ここでのシテはお馴染みの渡辺正行さん。前回同じ立場だったルー大柴さんと同様、なかなか難しい役回りだったと思います。狂言の型をまんま要求されるところと、普通の現代コントをやらねばならぬところ、なんとなく曖昧というか…古典の型が中途半端なので、ただ"古っぽい雰囲気"を真似ているだけに見えてしまいました。前回のルーさんはあの濃ーーいキャラ(笑)で押し切ってしまった(爆)ところもありますが、渡辺さんはかなり緊張されていたのか(顔がマジで引きつって見えました・爆)動きも喋りもどんどん小さくなってしまった。その所為か、古典に沿った部分でないところも釣られて演技が固くなってしまう。登場シーンにて、あの懐かしのコント赤信号ネタ(レイバンのサングラス・サンローランの羽織・BIGIの袴・福助の足袋・サングラスを取るとラメのアイメイク)でイキオイを付けたんでしょうが、その後は辛かったかなー。渡辺さん云々というより、こういうシテを現代劇しか経験の無い人が演じるという事自体がとても大変なのだとあらためて感じました。アタリマエ過ぎる事ですが。
(余談ですが、もし今回もルーさんが出ていたら大騒ぎだったでしょうね…ルーマニア・笑)
対照的に、共演で前回も出ていたエネルギーの平子さんが、それはもう見事に"狂言師"然としていてかなりの驚き。前回も目を見張ったんですが今回は一種の余裕も見えてくるほど。もしかして古典が性に合っちゃったんでしょうか(笑)。堂々としているので演技も大きく見える。それだけに、初挑戦でシテだった渡辺さんの分が悪かったのは仕方ないところかも知れません。お忙しい人気タレントさんですから、稽古も充分とは言えなかったかも。「惜しい!」の一言です。
おバカなサラリーマン役の岩井ジョニ男さん。"Mr.オクレ"を彷彿とさせる(失礼?)、ちょっとキモイ系(ますます失礼?)の異質キャラでしたが、どうも笑いどころに微妙な空気のズレがあったようで(そういう芸風だったらゴメンナサイ・苦笑)、彼がやらされる物真似(「合宿所で後輩(光GENJI・諸星クン)を怒る田原俊彦」「時間を間違えた森進一」)も、元々あまり似ていないのを笑ってバカにするという設定なのか、それとも単に似ていないだけなのか(爆)…観ているコチラが一瞬考えて戸惑ってしまった(考えた時点でコチラがアウトかも・泣笑)。単に、観ている自分と空気の合わない芸風だったのか…。
ラストのオチは本家本元『二人大名』と同じ、犬とニワトリのマネと「起き上がり小法師」の謡い。ここはまんま本家本元のコピーなので、この定番爆笑オチ(直前の本家本元ヴァージョンも大ウケでした♪)をやりたいが為のこの現代版だったかという気もします。最後は渡辺さんも平子さんも息が切れてましたね(笑)。コレが平気な本職狂言師とはまさにアスリートです~。
いろいろ文句(爆)が多くなってしまったようですが、この後に上演されたメインの『TANE~種~』よりも、狂言と現代コントをフィフティーフィフティーに扱おうとしたように見えるこの『二人大名』現代版の構成・演出の方が、もしかしたら難しいのかなとも感じました。この後のメイン『TANE~種~』のように自由な発想で創るお芝居と比べて、あくまで本家本元の古典に沿った形でやる以上(この企画での位置づけはそうだと思われます)、稽古など"下ごしらえ"の段階からまだまだ改良の余地が沢山ありそうに思えました。
※『TANE~種~』
コンビ名が"世阿弥"ということだけで、有名狂言師と共に「よろずテレビ」のCM撮影にかり出されたお笑い二人組。その片割れ・南原は行き詰まってこの世界から足を洗おうと考えています。そこに突然、ホンモノの世阿弥の霊が現れて南原に憑依。CM撮りは混乱して一旦中断。南原の身体を借りた世阿弥は、現代の風景が物珍しく、傍にいたカメラマンと一緒にスタジオ見学を始めます。相方の様子が急におかしくなって心配していた"世阿弥"のもう一人・井川が、今までのことを全て忘れてしまって眠りについている南原に、自分達のオリジナル・ギャグ「スベればクビ!秘すれば花!」を思い出せと励ますと、「秘すれば花」の言葉に感動した世阿弥の霊(この時、ホンモノの世阿弥は『風姿花伝』執筆中で、良い言葉が見つからず悩んでいた)が、嬉しさのあまり夢の中で喜びの舞を舞います。夢の中は室町の世。民衆の見守る中、ライバルの音阿弥が現れて舞い比べに。やがて民衆もそれに加わって大きなマツリの輪となります。目を覚ますと傍らには件のカメラマン。彼も今の自分のありように悩んでおり、世阿弥の霊は「全ては"寿福延長"に通ずる」と言って彼を励まします。そうこうしているうちに中断していたCM撮影が再開。なげやりなまとめ方をした敏腕ディレクターに初めてカメラマンが反発、現場の他のメンバーもカメラマンに賛同して、もう一度CMを作り直すことに。"見る人を楽しませる為に力を尽くすことの大切さ"をあらためて悟った一同はCMを完成させ、カメラマンも自信を取り戻し、南原もお笑いを続けることを決心して、世阿弥の霊は元の時代に帰っていきます。
結論から言うと、これは"狂言とコントの結婚"というよりは、普通にコント仕立ての現代劇だったと思います。と言っても、お話自体は掛け値なく面白かった♪前回は、狂言と現代コントをどのように絡めていくか、荒削りのまま終わったように覚えていますが、今回は思い切って(?)現代寄りのアプローチにまとめ、狂言の手法を見せるところは本職・万蔵師に一任していました。ただ、前回見事に"狂言師"していたナンチャンの姿は今回は印象薄。現代のお笑い芸人(現代コントの演技)と、その芸人に世阿弥の霊が乗り移った状態(古典的演技)の差があまりありません。多分意図的にそういう演出にしていたのではとは思いますが、今回も"古典のナンチャン"を楽しみにしていた自分にはちょっともの足りなかったかなーという感じです。
対照的にまぁ呆気にとられたというか(笑)…万蔵師の"現代コント挑戦"には思いっきり惹き付けられました。"視聴率男"の異名を取る敏腕ディレクターという役どころ。自分の業績を鼻に掛けた、それこそ"鼻持ちならない"イヤミなキャラを実に楽しげにノビノビと(爆)演じている万蔵師。あの、普段は人当たりの良い優しい笑顔の万蔵師がホントにいけすかない人間に(←褒めてるんですよ~)。ストライプのシャツの上に、石田純一風(笑)に羽織ったクリーム色のカーディガン、頭にサングラスを乗っけてギョーカイ系の匂いがプンプン。似合うんだコレが実に似合う!!途中、ふっくら体型のドロンズ石本演ずるADに担ぎ上げられてポーズを取るシーンがあったのですが、着地する際床に滑って軽く転倒するアクシデントが。上手く話の流れに乗せながらも素で慌てる石本さんに万蔵師「おいおい~ココ滑るよ~!」…ってソコが貴方の普段の職場じゃないですか~(苦笑)!アドリブもあっさりとこなします♪物語後半ではアダモちゃんこと島崎俊郎さんをこれまたアドリブで弄り回し(爆)…本当にコント初挑戦とは思えませんわ。もちろん、本職の技を見せるシーンではさすがの存在感。世阿弥のライヴァル・音阿弥に扮して、ナンチャン世阿弥との舞い対決。何故かそれが途中からソーシャルダンスになりナンチャンとアルゼンチンタンゴを披露(笑)。この変化も何の苦もなく魅せてしまう。いやはや万蔵師、八面六臂の大活躍でした。
やはり伝芸の人は強い、それが実感です。それはもう萬斎師で重々分かっていたことですが(笑)…本業の古典はもちろん、現代的アプローチでも余裕で自分の場を創ってしっかりとアピール出来てしまう。揺るがない技術と柔軟な対応力は、現代劇の方々とは比べモノにならないほど高いレベルにあると痛感させられます。
その万蔵師に弄られまくったアダモ島崎さんですが、"大物狂言師"という意味深な(笑)役どころではっちゃけてました。万蔵師があまりに弄り倒そうとするものだから、途中で息が切れ半分本気で「ここは時津風部屋か?これはかわいがりか?」という、時節柄非常にキワドイ台詞がアドリブで出ちゃってました(汗)。うーーん、もし録画しててもココは危なくてオンエア出来ないかも(苦笑)。
世阿弥と音阿弥の舞い対決を見守る、夢の中の室町の人々。二人の戦いに魅せられ高揚し、弘道お兄さん先頭にレビュー風のラインダンスを始めます。舞い対決で見所もホカホカに"あたたまって"いたので、ラインダンスでは自然に手拍子が。能楽堂の中が"マツリ"の空気に満たされます。このあたりの見せ方・乗せ方はさすがタレントさん達だなという実感。文句なく明るく楽しいんですよね。この"楽しさ"が今回のこの物語のテーマに通ずるのではないかと思いました。
細かいところですが、ここでの弘道お兄さん、一言台詞があります。なるほど公共放送仕込み(笑)、狂言風の台詞でしたがなめらかな滑舌とピンと通る声が一瞬でも強く印象に残りました。その前の登場シーンではお約束通りアクロバティックなアクションを見せてくれましたが、この台詞回しを聴いた限りではもっと台詞のある役でもイケたんじゃないかなぁと、少々欲張って想像してしまいました。ちょっと贔屓目かな(苦笑)。そうそう、カーテンコールで弘道お兄さん、欄干越え飛び込み前転を披露してくれました!それはもう鮮やかに軽々と…もちろん膝はぶつけませんでした(大爆)。
思い付くままつらつら書いてみましたが、他にも印象的なシーンが随所にありました。今回は敢えて現代劇に寄った構成にしたお陰で、かえって古典の役者の底力を見せつける結果になった部分も大きかったと思います。お芝居として非常に楽しく拝見出来た反面、前回からの大看板である「狂言とコントが結婚したら」という課題からは少し遠ざかった感も否めません。"結婚する"ということがどのような形で舞台にあらわれるべきなのか想像も出来ませんが、「まずはやってみよう」的だった前回に比べて遙かに形を成してきているこの企画、これからも是非続けていって欲しいと思います。
「花は心 種は技
まことの花の咲く庭は
人の心の奥深く
秘するが花と申すなり」
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コメント
渡辺正行、高松公演では「どうせできないんだからそのまんまやっちゃえ!」と開き直ったのか(笑)カタくはなってなかったですが、単に時代劇っぽいセリフでコントやってる風に見えました。
アダモちゃんの「時津風部屋か」もありました!アドリブでやったらウケちゃったんで、定番セリフになったのかも。
万蔵さんの洋服姿は初めて見ましたが、意外に(失礼)ほっそり、すらりとした体型でしたねぇ。若旦那よりも足長…ごほっごほっ…
投稿: 瑞穂 | 2007年10月21日 (日) 11:29
万蔵さん、洋服姿だとホントにほっそりしてましたね。
「時津風部屋か」は、夜の部では、ドロンズ石本に向かって「お前は時津風親方か!」でしたよ。
投稿: ムラ | 2007年10月21日 (日) 20:39
>瑞穂さん
渡辺さん、普段もそんなに器用なタイプとは思えないんですけど(失礼!)、とにかく初日の初回は可哀相なぐらいの固さに見えてしまいました(苦笑)。渡辺さんに限らず、この古典アレンジ版でのシテはさすがに難しいと思いますね。中途半端にするんだったら完全に現代解釈にしちゃっても良いんじゃないかとは思うんだけど…それだとわざわざ"狂言"にしなくても良くなっちゃうしマズイか(爆)。
いや~~お相撲ネタはやっぱドキドキしちゃいましたね~(笑)。"ザ・ニュースペーパー"の皆さんだったらあっさりやっちゃいそうですけど(笑)。
>ムラさん
聞くところに寄るとこの日の夜公演は盛況だったようですね♪なんか他人事ながらホッとしました(笑)。万蔵さんが意外に(←超失礼)イケメンで思わず目が行ってしまいました(爆)。確かにほっそり・足スラリでしたね~全体的な体型バランスは若旦那よりげほげほげほげほげほげほ。
"時津風ネタ"はとっさのアドリブじゃなかったんですね(大苦笑)。思い切ってるな~~~。
投稿: RICC | 2007年10月23日 (火) 21:21